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諸藤先生の論文が興味深かった話

  • 執筆者の写真: guan satai
    guan satai
  • 2020年6月24日
  • 読了時間: 2分

更新日:2020年6月24日

 諸藤先生とは、学習院大学の金髪の先生で、近年youtubeにも動画をいくつかアップしている、大学教員のイメージからかけ離れた先生だ。もちろん教員として生活している以上、奇をてらっただけではなく、実力ももちろんある。私が読んだ論文で、当人も最高傑作と称している論文が、"Photocatalytic C-H Amination of Aromatics Overcoming Redox Potential Limitations"である。

 光触媒による反応は、一般に基質と光触媒との還元電位の比較で進行するかどうかが決定される。今回のようなアミノ化は普通還元電位が高く、光反応では反応が進行しにくく、一般的にラジカル反応が利用されるが、もし光反応で進行させられたならより環境にやさしい反応を開発できたことになる。

 今回の論文では、基質より電位の低い光触媒を用いても反応が進行することが報告された。新規に開発されたルテニウム触媒の還元電位は+1.37 Vであり、これに酸化剤(K₂S₂O₈)を加え、より酸化電位の大きな基質を反応させたときに、ギブズエネルギーから反応が進行しないと思いきや、なんと反応が進行したのである。光の照射が無ければ反応が進行しないことは確認されているし、もう少し還元電位の高い光触媒を用いても反応は進行しない。酸化剤の選択はよりよい収率のために必要であるということも判明した。また、様々な酸化電位の様々な基質との反応をみると、芳香環の一般的な配向性に従った位置にアミノ基が、非常に高い選択性で結合していることが判明した。さすがに上限は存在したようだが、確実に言えることは、光触媒の還元電位を超えた基質との反応性はある特定の基質としか反応しないわけではなく、一般性を持つことが確認された。

 この論文によって芳香族のアミノ化に新手法が追加された。光触媒はプロセスに工夫を凝らして実質的な反応性を上げることが可能なので、工業的な実用化も決して絵空事ではないだろう。私が初めて読んだ論文でもあるので、ぜひこのアイディアが広く使われるようになってほしい。

Org. Lett.2020, 22, 7, 2822–2827

Photocatalytic C–H Amination of Aromatics Overcoming Redox Potential Limitations


 
 
 

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